「妙好人(みょうこうにん)」-赤尾の道宗-その3

2013-05-03

その道宗について、鈴木大拙は、なるほどこれが妙好人(みょうこうにん)というものかと思わせるエピソードを『日本的霊性』の中で紹介しています。

「彼(道宗)の徳行が一般に知れわたるようになったときに、
近村の天台宗というが、楢木寺の和尚(おしょう)さんが道宗を試して見ようと思って、
彼が草取りをやっているところを後ろから蹴飛ばした(いらぬ事をしたものである)。

すると道宗は顔色も変えず、起き上がってきて、また草取りを始めた。

和尚は、もういっぺん前のようにやってみた。
道宗には何の変わりもなかった。

そこで和尚はたまりかねて

「わけもなしに、他人に蹴られて、怒りもしない君は、
どんな境地なのか」

と聞いてみた。道宗は笑顔を崩さずに答えた。

「前世の借金払いだ。まだまだあるのかも知れない。」

(以上、『日本的霊性』(角川文庫版)P241より引用)

「前世の借金」とは、仏教教理の中の輪廻転生を前提にして、過去世において自分が犯した悪い因縁(カルマ)ということです。

他人から意地悪されることで、過去世からの悪い因縁が消えてくれるからありがたいと受け止めているわけです。

道宗は、浄土教の信者ですから、「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と唱えることで、阿弥陀様(あみださま)が救ってくださると信じています。

死後には、間違いなく極楽浄土に生まれ変われると固く信心しているので、この世での苦難も、極楽に生まれ変わるための「借金払い」と受け止められたのでしょう。

このような心に余裕のある境地を得られるのが、信心の功徳(くどく)でしょう。まさに妙好人(みょうこうにん)の境涯と言って良いと思います。

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