『新緝 森信三全集』について

2013-11-20

『月刊致知』のインタビュー記事と『修身教授録』が再刊されるまでは、森信三先生は、教育関係者のみに知られた隠者的な哲人でありましたが、致知出版社の活動を通じて、『月刊致知』の読者を中心に日本中に知られる存在となりました。

致知出版社の活動がなければ、現役の経営者である北尾吉孝氏が、『森信三に学ぶ人間力』(致知出版社)という森教学の解説本を出版するような広範囲な支持は得られなかったでしょう。

致知出版社からは、安岡正篤先生の本もたくさん出ています。それでも安岡先生は、致知出版社(創業35周年)が活動を始める前から、歴代総理大臣の師として有名な方であり、他の出版社からも本がたくさん出ていました。
それに対して、森信三先生は、知る人ぞ知るというマイナーな存在であったのを致知出版社がメジャーにしたと言えると思います。

致知出版社にとっても大事な存在である森信三先生ですが、森先生ご自身が編集された『森信三全集25巻』及び『続森信三全集8巻』は、いずれも自費出版で限定1千部の発行だったこともあり、古本屋でもほとんど手に入らない幻の名著になっていました。
SBIの北尾社長も、お金に糸目をつけずに、何年も全国の古本屋を探し、また、実践人の家関係者にも当たったそうですが、かろうじて『続全集8巻』は手に入れたものの、『全集25巻』は全巻を揃えることができなかったそうです。

そのような状況の中で、森信三先生を世間に紹介した致知出版社が、『月刊致知』創刊35周年記念事業として『新緝(しんしゅう)森信三全集』全8巻を今年(平成25年)9月に再刊行したわけです。
内容は、『続森信三全集』と同じですが、関係者の協力によって、全体的に校正をやり直したようです。
森信三先生が、最晩年に到達した「全一学」の研究所は、『続全集』の方に体系的に収録されていますので、森教学の真髄を学ぶためには、『続全集』の再刊は、大変意義深いものがあります。

しかし、本が売れない時代に、1セット約5万4千円もする全集を刊行することは、致知出版社にとっても経営的には大変な勇気のいることだったでしょう。損益分岐点を分析すると、最低でも数百セットは売れないと赤字が出るという計算だったようです。
かつて昭和30年代、40年代のように日本文学全集などが飛ぶように売れた時代ならばともかく、定価1500円以内の普通の本でさえ、1万部売れればヒットと言われるのが、現在の出版界の状況です。

致知出版社にとっても、『新緝(しんしゅう) 森信三全集』は、経営的にひとつのかけだったようです。
限定1千部と銘打って予約を集めていたとはいえ、数百部も予約が集まるかしらと本気で心配したらしいのですが、結果的には、予想をはるかに超えて、1200セット強も売れたそうです。
単純に売買代金総額から言えば、普通の本(定価1000円~1500円程度)が、5万部ほども売れた計算になるので、致知出版社にとって、近来まれな大ヒット商品になったといえるでしょう。
宣伝は、ほとんど『月刊致知』と自社のホームページだけですので、森信三先生の教えが持つ力に、藤尾社長は再び驚かれたそうです。

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