『論語』の言葉-5「己(おのれ)にしかざる者」②

2012-12-15

能力について言えば、自分を過信しないことが大事ではないでしょうか。

ある人を見て「自分と同じくらいの能力」と思う時は、実は、相手の方が優れているというのが、普通のようです。
自分よりも明らかに劣っていたはずの部下や後輩が、いつの間にか、自分を追い越しているということも、世間にはよくあります。

しかし、それは、むしろ喜ぶべきことでしょう。
特に上司は、部下が自分よりも有能さを発揮した時は、素直に喜び、ほめてあげる度量を持ちたいものです。自分よりも、実務的に有能な部下を育てることが上司の大事な仕事だからです。

松下幸之助さんは、松下電器のある事業部長が
「うちの事業部は新設の事業部で、他の事業部から、仕事ができない人ばかり集められて、ちっともうまくいきません。」
と報告した時に、激怒されたそうです。

「松下電器に、ダメな人間はおらん。そういう人間は採用していない。
仮に、仕事ができない部下がいても、そういう人を導いて、本来の力を発揮できるようにすることが事業部長の仕事やないか。部下の愚痴をいうようでは、事業部長失格や。」
という趣旨で、厳しくお叱りになられたということです。

小学校中退で、学歴も財産もなく、体も必ずしも強くなかった松下幸之助さんが、3畳一間の町工場から出発して、一代で世界有数の家電メーカーを作ることができたのは、自分よりも優れた能力を持つ部下をたくさん持つことができたからでしょう。
松下幸之助さんには、自分よりも有能な部下を使いこなす経営力があったということだと思います。

私達のような普通のビジネスパースンが、
「己(おのれ)に如(し)からざる者を友とするなかれ」
という言葉から教訓を得るとしたら、
部下の能力を育てて、自分よりも有能な人材になるように指導することが大事であるという意味に解釈するのがよいと思います。

部下や後輩が本来持っている能力をうまく引き出せし、うまく育てることができれば、自然と自分よりも劣った人が少なくなり、優れた人がまわりに多くいることになります。
そういう人こそが、優れた上司、幸せな上司というべきでしょう。

もちろん、部下の立場にある人も、上司のあらさがしばかりしてはいけません。
人間だれしも、短所や欠点があります。
しかし、短所や欠点は、長所の裏返しでもあるのが普通です。
ある人の特徴が、ある場面では、長所となり、ある場面では短所となるのではないでしょうか。

それを上司の短所ばかり見ていると、肝心の長所が見えなくなります。
そうなると、はたから見ると、上司の短所だけ似て、長所を受け継がない部下に育ってしまうことがあります。
逆に上司の長所を見て、その部分を素直に尊敬できる人は、上司の長所を受け継いで、ビジネスパースンとして、どんどん成長していくように思います。

また、会社をチームとして考えれば、お互いに欠点を補いあうように機能するのが強いチームといえるでしょう。
松下幸之助さんは、常々、
「人間は誰しも欠点があるのだから、上司は部下に自分の欠点を見せて、それを補ってもらうようにせよ。部下は、上司の欠点があれば、それを補うように仕事をせよ。」
と指導されたそうです。

なかなか難しいことではありますが、そういう雰囲気の会社、あるいは、部や課は、働きやすく強いチームになることでしょう。

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