布施(ふせ)し合う中に生きる

2013-10-25

このような地球の大生命(ガイア)の中で、生かされて生きている人間の姿を沢木老師は、次のように仏教的に表現されました。

天地も施(ほどこ)し、空気も施(ほどこ)し、
水も施(ほどこ)し、植物も施(ほどこ)し、
動物も施(ほどこ)し、人間も施(ほどこ)す。

―施(ほどこ)し合い。
―われわれは、この布施(ふせ)し合う中にのみ生きておる。
有難(ありがた)いと思うても思わないでも、そうなのである

『くれ』というのでもないのに、施(ほどこ)し恵まれる風景は
「むしり合いの世界」と違うて、じつに涼しい風景であり、
じつに宏大無辺(こうだいむへん)なる風景である

私たちは、大自然の「施し合い」のなかで、お互いに「布施(ふせ)しあう中にのみ生きている」と沢木老師は教えてくれています。

沢木老師は、1965年に、84歳で亡くなられています。ワトソンとクリックによってDNAの二重らせん構造が発見され、遺伝子学が発展しだしたのが、1950年代以降ですが、おそらく、沢木老師は、遺伝子のことは何もご存じなかったのではないでしょうか。

それにもかかわらず、21世紀の遺伝子学の教えてくれる生命観と沢木老師の教えは、重なって見えます。
半世紀以上前の禅僧の教えが、近代科学の発展によって、ますます、実感をもって感じられるようになってきています。
沢木老師は、禅の修行により直観的に、生命の本質をズバリと掴んでおられたのかもしれません。

沢木老師のいう「むしりあいの世界」とは、争いの絶えない現実の人間世界のことです。
俺が俺がという我欲が優先して、他者のことを考えない生き方をしている人は、「むしりあいの世界」に生きている人ということになります。
「むしりあいの世界」でも、勝者になっていれば、本人は、それで満足を感じているのかもしれませんが、はたから見ると、何とも暑苦しい生き方です。

それに対して、お互いに施しあう自然の世界は、実に「涼やかな世界」で、宏大無変な広やかで平和な世界です。この世界を暑苦しく生きるのか、涼やかに生きるのかは、私たちの心の在り方が決めるのでしょう。

沢木老師の言葉は、端的に、涼やかな世界の消息を私たちに教えてくれます。
沢木老師の教えの魅力があせないのは、このようなところに理由があるのだと思います。

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