布施(ふせ)し合う中に生きる

2013-10-25

最澄(さいちょう:767年-822年)は、日本の天台宗の開祖であり、空海(くうかい)と並ぶ平安時代を代表する偉大な名僧です。

最澄が定めた天台宗の僧侶養成についての規則が『山家学生式(さんが-がくしょうしき)』ですが、その中に「忘己利他(もうこ-りた)」という言葉があります。

『山家学生式』(さんが-がくしょうしき)には、

「己(おのれ)を忘(わす)れて、他(た)を利(り)するは、
慈悲(じひ)の極(きわ)みなり」

という一節がありますが、

「自分のことは後にして、まず人に喜んでいただくことをする、
それは仏さまの行いで、そこに幸せがあるのだ」

という意味です。

私たちはどうしても自分中心に考えてしまう傾向があります。人間本来の生存欲に根差すもので、やむを得ない面があります。

しかし、それが行き過ぎた場合は、「もっと欲しい、こうして欲しい」とまわりに望むことばかりが多くなりがちで、他人のことを忘れて、自分の利益ばかりを貪(むさぼ)るようなことがあります。
そのような状態を仏教では「餓鬼(がき)」といいます。文字通り、餓えた鬼であり、あれが足りない、これが足りないと、文句ばかりを言う人間の姿です。

そのような「餓鬼(がき)」になるなよという諌(いさ)めが、
「忘己利他(もうこ-りた)」の教えであるわけです。

近江商人の「三方よし」(買い手よし、売り手よし、世間よし)の精神は、「忘己利他(もうこ-りた)」という最澄(さいちょう)の教えをさらにわかりやすく、商売の世界の現実に即して展開したものといえるでしょう。

「三方よし」(買い手よし、売り手よし、世間よし)は、自分を後回しにして他人を喜ばせることが、商売繁盛の秘訣であり、結果的に、自分も、もうかる道であるという教えですが、世間も視野に入れているところに江戸時代の近代性を感じます。
現代においては、「三方よし」(買い手よし、売り手よし、世間よし)を「相手よし・自分よし・みんなよし」と言いかえて、平和と幸福をもたらす考え方として世界に広めようという運動をしている団体もあります。

ここでいう「みんなよし」には、地球環境など自然との共生の視点も含まれているのではないかと私は思います。

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