『損すること』を学ぶ

2013-11-16

さて、仏教の開祖であるお釈迦(しゃか)様に話を戻します。

お釈迦様は、約2500年前に、インドの北方、現在のネパールのルンビニで、シャーキャ族の王子として生まれました。

当時のインドは、大小10数カ国が勢力争いをする一種の戦国時代でした。シャーキャ国は、大国であるコーサラ国とマガタ国に挟まれた小国であり、お釈迦様の晩年には、コーサラ国によって滅ぼされています。
それでも、お釈迦様の青年期までは、シャーキャ国も、まずまず平和で繁栄していたようで、お釈迦様は王子として何の不自由もない豊かな環境で育ち、16歳で美しい妻と結婚し、子供にも恵まれました。

先日、たまたま、ケーブルTVで『釈迦』という大映映画を放送していました。1961年に、当時の5代映画社の一つである大映が、制作費5億円で制作した大作映画です。
当時(1960年頃)の大卒初任給は、約1万6千円程度です。現在は、約20万円ですから、その差は12倍以上です。
単純には比較できませんが、初任給の差から推測すると、当時の5億円は、今の50億円以上になります。
映画には、勝新太郎、市川雷蔵、山本富士子など当時の大映所属の一流スターがこぞって出演していました。

映画の内容は、一応は、お釈迦様の人生をなぞっていますが、映画的な脚色も結構あります。

映画では、勝新太郎扮するダイバダッダ(お釈迦様のいとこ)が、お釈迦様が出家される前に結婚されたヤショーダラー妃に横恋慕します。
その挙句、お釈迦様が出家した後の留守を狙って、ヤショーダラー妃に無理やり迫って、妃をレイプして自殺に追い込むエピソードがありました。しかし、史実は、まったく異なります。

ヤショーダラー妃は、出家前のお釈迦様とのあいだに、男の子(ラーフラ)をもうけ、お釈迦様が仏教を開いてから後、ラーフラとともに出家してお釈迦様の弟子になっています。
ヤショーダラーは、尼僧中の第一人者となり、ラーフラも、釈迦の十大弟子の一人となっています。

また、ダイバダッダは、言い伝えでは、お釈迦様の弟子になったのに、お釈迦様に背いて大逆罪を犯し無間地獄に落ちたとされます。

ただ実際には、よりきびしい戒律を主張して、お釈迦様の教団から独立して別教団を作った修行熱心な人であったようです。

いずれにしても、ダイバダッダが、ヤショーダラー妃を自殺に追い込んだような史実はありません。

映画的には、話を盛り上げるために、そのようなフィクションを盛り込んだわけですが、そのために「仏陀(ブッダ)を汚し、仏教徒を侮辱している」としてインド、スリランカ、タイ、ビルマなどのアジア諸国から猛抗議を受け、当初は実施するはずだった海外ロケが中止になったという逸話もあるそうです。

映画『釈迦』は、CG(コンピューター・グラフィック)が全くなかった時代に、当時の特撮技術を駆使して撮影した壮大かつ幻想的なシーンが素晴らしく、名優たちの名演技と相まって、娯楽大作として空前の大ヒットをしたそうです。

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