『論語』の言葉-5「己(おのれ)にしかざる者」③

2012-12-15

最後に、人柄や人間性の面については、どうでしょうか?
人柄の面において、他人を「自分より劣っている」かどうか、判断できるでしょうか?

本来は、人柄や人間性こそ、孔子が最も重要視した大事な要素です。
また、ビジネスパースンにとっても、自分のまわりの人の力を引き出せるかどうか、人を育てることができるかどうかは、単なるスキルよりも、その人の人柄や人間性が一番のカギになると思います。

それでは、人柄や人間性を他人と比較することはできるでしょうか?
人柄や人間性を数値化することは本来無理があると思いますが、直感的には、なんとなく感じ取ることができますね。
特に、上司や部下や取引先など、立場の違う人に対する態度をはたから見ると、だれしも、なんとなく、その人の人柄を感じ取ることができます。

しかし、大事なことは、他人をどう評価するかではないと思います。
自分と他人を比べて、他人を批評するよりも、自分を反省することが大事でしょう。

「己(おのれ)に如(し)からざる者を友とするなかれ」
「自分に及ばない者と交わって、えらぶるようなことがあってはならぬ。」

という言葉は、自分で自分をいさめる言葉と理解するのがよいと私は思います。

他人の長所、優れた点を認められる素直な心を持つことが、人間として大事なことだと思います。
まわりの人をみて、「自分よりも劣っている」と思う人は、どこかで謙虚さを失っているのかもしれません。
むしろ、まわりの人に、自分よりも優れた点を見ることができる素直な心の持ち主の方が、人間として成長していくのだろうと思います。

逆に、人によっては、他人と比べて自分の短所ばかりが気になり、自信をなくし、劣等感に苦しんだり、うつ的な気分になる場合もあるかもしれません。
しかし、自分よりも、どこか優れた人がまわりにいるということは、その人から良い影響を受けるチャンスをいただけるわけですから、それを幸運ととらえて感謝しましょう。

人間には、だれしも、長所もあれば、欠点もあります。
また、人はたいてい、他人の欠点には、すぐに気が付くものですが、他人の長所については、それを認めたくない感情が働くことがよくあります。
もし、他人の長所を認めることができるならば、それは、自分が素直で謙虚な気持ちになっているしるしだと、心の中で自分をほめてあげましょう。
他人の長所を素直に認めることができる人は、それだけでも素晴らしい人だと、私は思います。

さらに、他人の長所をマネできる人、そこから学べる人は、もっと素晴らしいですね。
とはいえ、人間には、個性がありますから、マネしたくても、他人の長所をマネできないこともあるでしょう。
マラソンランナーにはマラソンランナーの長所があり、相撲取りには相撲取りの長所があるのですから、他人の長所をすべてマネすることはできません。

しかし、他人の長所を認めるという素直で謙虚な気持ちは、人間として大事にしたいものです。
他人の長所をたくさん認めることができる人は、心の広い幸せな人だと思います。

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