今東光の毒舌人生相談-その1「本音と建前」5

2013-05-03

さらに、父親を「本音と建前が違うから嫌いだ」という相談者である女子高生への今東光師のアドバイスは、次のようなものです。

「要するに、あなたのお父さんは本音と建前が違うわけで、男が全部そういうわけではない。
だからあんたは、表から見ても、裏から見ても、矛盾のない建前と本音が、一本筋が通っている人を恋人にするなり、夫にするなりしなさい。」

相談者である女子高生のお父さんを否定するのではなく、犠牲者と讃えた上で、
「あんたは、表から見ても、裏から見ても、矛盾のない建前と本音が、一本筋が通っている人を恋人候補として捜しなさい」
とアドバイスしています。

このアドバイスも、味がありますね。

お釈迦様の次のエピソードを思い出させます。

<キサー・ゴータミーの話>
(原始仏典『クッダカニカーヤ』(長老尼の譬喩)より)

キサー・ゴータミーは、結婚するとまもなくかわいい男の子を授かった。ゴータミーは大変この子をかわいがり大切に育てていた。
しかし、男の子が歩いて遊ぶようになったころ、突然死んでしまったのです。

ゴータミーは愛児の突然の死が信じられず半狂乱の状態になってしまいました。

ゴータミーは、死んだ愛児を抱きかかえ、
「誰か、この子を生き返らせる薬を下さい」
と言って、町じゅうを歩き回ったのです

町の人もさすがに「このまま放って置けない」と考え、ブッダに薬をもらうよう、ゴータミーに教えました。

ブッダに会いに行くとゴータミーは言いました。

「この子を生き返らせる薬を下さい」

するとブッダはこう言いました。

「ゴータミーよ、よく聞きなさい。
  それでは今から町に行き、家々を訪ね、
  まだ一人の死者も出したことのない家から、
 芥子の粒をもらってきなさい。
 そうすれば、その薬を作ってあげよう」

町に出たゴータミーは言われた通りに、一軒一軒訪ねて廻わりました。
 しかし、死人を出した事のない家などあろう訳はありません。

そのうちようやくブッダが自分に何を教えようとしたのかわかったゴータミーは、気がつきました。

「愛する我が子よ、
 わたしは今まであなたが一人だけ死んでしまったとばかり
思っていました。
でも、生まれてきた者は、皆死ぬのが定めなのですね」

ゴータミーは愛児を墓に埋めてやり、ブッダのところへ再び行きました。
ブッダが、ゴータミーに尋ねました。

「ゴータミーよ、芥子の粒はもらえたかね」

それに対して、ゴータミーは、答えました。

「ブッダよ、もう芥子の粒はいりません。
家々を訪ねて廻るうちに、
死なない人などいないということがわかったのです。
わたしをあなたの弟子にしてください」

こういって、キサー・ゴータミーは、お釈迦様の弟子の一人となったそうです。

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