禅の効用⑤ 「体に対する効果」-4

2013-01-13

(4)最も簡単なリズム運動はイス禅
 じつは、有田先生が推奨する「リズム運動」の中で、最も簡単にできるのがイスに腰掛けて行う「イス禅」であると私は思います。

もちろん、禅の修行をある程度深くやろうと思えば、座布団の上で、結跏趺坐(けっかふざ)や半跏趺坐(はんかふざ)など仏像と同じような坐り方をして、本格的な坐禅をする方が効果的です。

私も、学生時代に人間禅道場にご縁ができてから、ずっと一般的な坐禅をしてきました。また、早稲田大学に学生のための坐禅会をつくって、3年間、毎週、学生に坐禅を指導した経験もあります。

しかし、その経験から言いますと、イス生活が当たり前になった現代人にとっては、坐禅というのは慣れるまでは、かなりつらいものであるということです。
まず、慣れない足の組み方をするだけで、膝やももが痛みます。また、最初はよくても、じきに足がしびれてきて、痛み出します。

もっとも、これには、個人差がありますから、体が柔らかい方は、最初からきれいに坐禅が組めたり、足もあまり痛まない方もおります。
しかし、普通は、坐禅の足をきれいに組めない方が多いですし、組めたとしても、途中から「痛みの我慢大会」のような状況になってしまい、肝心の呼吸に集中できません。

禅仏教では、足の痛みをこらえて、正しい坐禅の姿勢(坐相:ざそう)を手に入れることが最初の修行であると位置づけられていると思いますが、これは、体の固い方にとっては、かなりの苦行です。

さらに、まずいことには、何とか、足を組めるようになったとしても、今度は、足に気を取られて、肝心の背すじが曲がってしまったり、体が左右に傾いたりして、なかなか、きれいな坐禅の姿勢にならないのです。
そうなると、丹田(たんでん)呼吸という坐禅の腹式呼吸が十分にできません。

坐禅によるリズム運動の効果を得るためには、まず、坐禅の正しい姿勢を身につける必要があります。しかし、坐相が身に付くには、毎週のように禅道場にかよって、きちんとした指導を受けたとしても、2か月から3か月程度は時間がかかるように思います。人によっては、半年以上もかかるケースもあるでしょう。その間、足の痛みと戦いながら坐禅をするのは、結構つらいのではないかと思います。

いったん坐相を身につければ、一人で自宅でも簡単にできる坐禅も、坐相を身につけるためのトレーニングに時間がかかるのが難点です。

坐禅を難しくしているのが、実は、結跏趺坐(けっかふざ)や半跏趺坐(はんかふざ)などの仏像のような座り方にあります。

しかし、坐禅で一番、大切なのは「腰骨を立てる」ことです。腰を少し後ろに張り出すようにして、背すじをまっすぐに伸ばす姿勢を維持することで、丹田(たんでん)に良い刺激が加わって、自律神経に良い影響が出るのです。

その点、イス禅は、イスに腰掛けて足を組まないという点を除けば、坐禅と同じ姿勢になりますから、日常的な意味では、十分な効果が得られます。

禅によって深い「悟り」体験を得たいのであれば、禅道場できちんとした坐禅の指導を受けるべきですが、心身の健康のために自宅を中心にやるのであれば、「イス禅」をお勧めします。

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