「妙好人(みょうこうにん)」-才市(さいち)-その14
さらに、ジョセフ・キャンベルの『神話の力』(ハヤカワ文庫)から
神話の意義について引用してみましょう。
「神話は絵空事ではありません。
神話は詩です、隠喩(いんゆ)ですよ。
神話は究極の真理の一歩手前にあるとよく言われますが、
うまい表現だと思います。
究極のものは言葉にできない。だから一歩手前なんです。
究極は言葉を超えている。イメージを超えている。
あの生成の輪の、意識を取り囲む外輪を超えている。
神話は精神をその外輪の外へと、知ることはできるが、
しかし語ることはできない世界へと、放り投げるのです。
だから、神話は究極の真理の一歩手前の真理なんです。」
(『神話の力』ハヤカワ文庫)
「そういう経験と共に、ということはその神秘と
あなた自身の神秘を知りつつ人生を生きるのは、大事なことです。
それは人生に新たな輝きを、調和を、大きさを、与えてくれる。
神話的にものを考えることは、あなたがこの「涙の谷」において
避けられない悲嘆や困苦と、折り合いをつけて
生きるのを助けてくれます。
あなたの人生のマイナス面だとかマイナスの時期だと
思われるもののなかに、
プラスの価値を認めることを神話から学ぶのです。」
(『神話の力』ハヤカワ文庫)
神話は、科学的歴史的な事実ではないかもしれませんが、
私たちの人生を豊かにしてくれる「真実」や「真理」を教えてくれるものです。
キャンベルによれば、「涙の谷」に例えられる悩んだり、苦しんだり、悲しんだりという困難な時期を乗り越えるための力になってくれるといいます。
仏教の教え、特にお経の中には、あまりに空想的な話が多く、とても科学的とは思えない話がたくさんあります。
阿弥陀仏の話もそのような空想的な話の一つかもしれません。
しかし、阿弥陀仏の教えは、日本人が平安時代・鎌倉時代から深く親しんできた最も大事な「神話」ではないでしょうか。