『修身教授録』とペスタロッチについて

2014-02-09

たとえば、『修身教授録』には、ペスタロッチについて、以下のような推奨の言葉が記載されています。

まず第一に、諸君は今後毎年2月に入ったら、
手頃のペスタロッチー伝を一冊読むがよいでしょう。
そしてちょうど読み終わった数日後に、
この命日を迎えるようになるとよいと思うのです。

もし諸君がこの一事だけでもつづけたならば、
その間諸君は、教育に対する情熱を失わない
ということができましょう。

そもそも人間というものは、情熱を失わない間だけが、
真に生きていると言ってよいのです。

内面的情熱の枯渇した時は、
すなわち生命の委縮した時と言ってよいのです。
(『修身教授録』P.227~228より)

この外にも、ペスタロッチーに関したものは、
見つかりしだい、なるべく買っておくが良いでしょう。
というのも先ほども申すように、
諸君がペスタロッチーという人から離れない間は、
諸君らの教育に対する情熱は失われないと言ってよいからです。
しかし、それにはまず師範の在学中に
ペスタロッチーに関するものを
できるだけたくさん読んでおくことです。

実際、小学校の先生で、
若い頃にペスタロッチーを読んだ人と、
読まない人とでは、すぐに分かります。
私の知人のうちでも、
若いころペスタロッチーを読んだことのある人は、
どこか教育に対する情熱を失わないでいます。
実際、不思議と言えば不思議なことです。
(『修身教授録』P.229より)

私も、大学時代に高校と中学の国語科の教員免許をとり、30年近く前ですが、高校や学習塾で非常勤講師として生徒を教えた経験があります。
しかし、私の記憶では、大学の教員免許のための教育学の授業で、ペスタロッチの話はほとんど出なかったように思います。

それだけに、『修身教授録』の言葉を読んで、
「なぜ、森信三先生がこれほどまでにペスタロッチに共感するのか?」、「そもそも、ペスタロッチとはどのような人なのか?」
と疑問を感じ、アマゾンでペスタロッチに関する書式を検索してみました。

すると、最初にヒットするのは、岩波文庫の『隠者の夕暮・シュタンツだより』(ペスタロッチ著/長田新訳)でした。

しかし、それ以外のペスタロッチ関係の伝記本や参考書は、出版時期の古い本ばかりで、しかも、古本でしか手に入らない本がほとんどでした。
あとは、教育学者による専門的な研究書しか出版されていないといった状態で、一般向けに書かれたペスタロッチ入門のような本は、新刊本では、ほとんど出ていません。

いわば、ペスタロッチは、有名ではあるが、教育研究者以外には読まれることの少ない、半ば忘れられた教育思想家になりつつあるように感じました。

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