『禅と陽明学』より「儒教と老荘と禅」
余談ですが、重力の働きや宇宙のことを説明するのがアインシュタインの相対性理論です。これに対して、素粒子の世界、極めて小さな世界においては、重力以外の力(電磁力や核力)の働きが強いため、相対性理論は適用できません。
微細な素粒子の世界を説明するのが「量子力学」です。
湯川秀樹博士の中間子論から、最近の小林・益川理論まで、日本人でノーベル物理学賞を受賞した研究は、ほとんどが、素粒子に関する研究です。
極微の世界を説明する量子力学と、極大の宇宙のあり方を説明する相対性理論を統一したいというのが、20世紀後半以降、多くの物理学者が取り組んでいる研究課題ですが、21世紀の現在も、完全な統一理論は作られていません。
相対性理論と量子力学を「時中」するような理論ができれば、科学的に自然界のことがより一層よく理解できることになります。
「ひも理論」などがその候補らしいのですが、まだまだ未完成のようです。
自然界の謎は、深く大きいものがあります。20世紀後半から、21世紀にかけて、観測技術が発達すればするほど、次々と、謎が発見されています。
20世紀の終わりに発見され、発見者にノーベル物理学賞が与えられた「ダークエネルギー」などは、その最たるものかも知れません。
真空の空間が持つと思われる「ダークエネルギー」は膨大なもので、光や電波で観測できる普通の物質は、宇宙全体の4%に過ぎず、残りの96%は、「ダークエネルギー」や「ダークマター」といわれる未知の物質やエネルギーです。
人間は、大宇宙のわずか4%しか観測できていないのです。
その4%の部分も完全に理解できているわけではなく、宇宙は謎だらけです。
生命もまた謎だらけで、遺伝子の精巧な仕組みが分かればわかるほど、ダーウィンのいう「突然変異と自然淘汰」だけで、果たして、これほど精巧な生命が進化できたのかという謎が深まっています。
そのために、科学者の中にも、サムシング・グレートといわれる、いわば神仏の存在を否定できないのではないかと考える人が増えてきています。
20世紀においては、科学技術の発達によって、自然をコントロールできるかのような傲慢さがありましたが、それが、深刻な公害問題や温暖化の問題を引き起こしています。
福島原発事故にしても、引き金は想定外の大地震と津波であったとしても、そもそも、扱いが難しい原子力エネルギーを技術的にコントロールできるはずだ、という人間の科学技術に対する過信が招いた人災ではないかと思われます。
21世紀において、人間は、大自然、大宇宙のまえに、よりいっそう謙虚になるべきなのでしょう。