あのカモは何だ?

2015-08-29

■いきなり鼻をねじる(2/2)

さて、馬祖(ばそ)が百丈をお供に連れて外出したときに、野原を歩いていると、川からバタバタと一羽のカモが飛び立ちました。

それを見た馬祖(ばそ)は、弟子の百丈(ひゃくじょう)に向かって、

「あれは何だ?」


と聞きました。

百丈(ひゃくじょう)は、見たままに

「カモでございます」


と答えました。

さらに、馬祖(ばそ)は、

「どこへ飛んでいくのかな?」


と問いかけます。

すでに遠くまで行ってしまったカモを見て、百丈(ひゃくじょう)は、

「ハイ、どこかに飛んで行きました。」

と見たままに答えました。

すると、馬祖(ばそ)はいきなり百丈(ひゃくじょう)の鼻をつまんで、思いっきり、ねじりあげました。

馬祖(ばそ)は、虎視牛行(こし-ぎゅうこう)<虎のように鋭くにらみ、牛のように堂々と歩く>と言われた体格の立派な偉丈夫(いじょうぶ)です。

その馬祖に、力いっぱい鼻をねじりあげられたのですから、百丈(ひゃくじょう)は、たまったものではありません。

おもわず、「ア、イタタター、イターイ」と悲鳴を上げました。

すると、馬祖(ばそ)は、

「何だ、まだそこにおるではないか!

どこにも飛んで行っておらんぞ。」

と言いました。

その馬祖(ばそ)の言葉をきいて、百丈(ひゃくじょう)は、「ハッ」と悟りを開いたと伝わっています。

野原でカモが飛び立つのを見て、百丈(ひゃくじょう)は、その事実のままに答えたのに、なぜ、馬祖(ばそ)から鼻をねじりあげられなければならなかったのでしょうか?

なぜ、馬祖(ばそ)は、「そこにおるではないか!」と声をかけ、それを聞いた百丈(ひゃくじょう)は、悟りを開くことができたのでしょうか?

どうぞ、つづきをお読みください。

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