今東光の毒舌人生相談-その1「本音と建前」2
以下は、「教師である父親の学校での発言と家での言動があまりに矛盾しているので悩んでいる」という相談に対する今東光(こん-とうこう)師の回答です。
「この世の中で宗教家、教育者、官吏(かんり)っていうものほど偽善的なものはないんだ。また、偽善者でなきゃあ、その世界でやっていけないんだよ。
お父さんは、日本の今の社会における制度の中の哀れな犠牲者なんだと同情してやるんだな。憎んだり軽蔑するより、かわいそうなんだとあわれんでやるこった。
要するに、あなたのお父さんは本音と建前が違うわけで、男が全部そういうわけではない。
だからあんたは、表から見ても、裏から見ても、矛盾のない建前と本音が、一本筋が通っている人を恋人にするなり、夫にするなりしなさい。」
宗教家や教育者は、偽善者であると、身も蓋もないようなことを書いています。今東光師自身が、僧侶(宗教家)であり、国会議員(参議院議員)でもあったので、説得力を感じます。
まさに、本音丸出しの今東光節が炸裂した感じです。
しかし、そのような偽善者たちを憎むのではなく
「日本の今の社会における制度の中の哀れな犠牲者なんだと同情してやるんだな」
とアドバイスをしているあたりに、今東光師の人間の大きさを感じます。
宗教家や教育者や官僚を偽善者と決め付けることは、少し乱暴な議論ではありますが、その三者に共通することは、建前を大事にしなければいけない職業であるということでしょう。
この場合の「建前」とは、「個人の利益より、社会の利益を優先する」「利益よりも正義を大事にする」などの道徳的・倫理的な内容になると思います。
世の中には、建前と本音があります。誰でも、その立場に応じて、場面に応じて、建前と本音を使い分けているでしょう。その中でも、宗教家や教育者や官僚は、最も、建前を大事にしなければならない立場です。
彼らが本音丸出しで、自分の利益を優先するようなことばかりを言ったり、そのような行動をしたら、社会は、大混乱することでしょう。
私も、公認会計士として仕事をするときは、特に監査法人に勤務していた時には、本音よりも、建前優先で発言せざる得ない時がたくさんありました。