今東光の毒舌人生相談-その1「本音と建前」6

2013-05-03

今東光師に相談した女子高生は、

「表から見ても、裏から見ても、矛盾のない
 建前と本音が、一本筋が通っている人」

を恋人候補として探したかもしれません。

そして、それらしき人と巡り合い、何年後かに幸せな結婚できたかもしれません。

しかし、やがて「表から見ても、裏から見ても、矛盾のない建前と本音が、一本筋が通っている人」は、この世には(ほとんど)いないということに気がついたことでしょう。

子供ができ、母親として、子育てや世間との付き合いに苦労するうちに、「本音と建前」が食い違うお父さんのことが理解できるようになったことでしょう。
やがて、嫌っていたお父さんを尊敬するに至ったかもしれません。

もし、今東光師が、

「世の中には、本音と建前がある。
誰でも、多かれ少なかれ、本音と建前はずれているし、
状況や立場によって、本音と建前を使い分けているいんだよ」

と回答したとしても、相談者である女子高生には、その時点では理解できないでしょう。

相談者自身が、様々な人生経験を経て、世の中のことを理解するにつれて、あるレベルの「本音と建前」が社会を維持するために必要不可欠であることに気がつくことでしょう。

そのときに、相談者は、今東光師のアドバイスの意味や本当のありがたみを心底、理解されたのではないかと思います。

ある程度の「本音と建前」の使い分けは、社会にとって有益なこともあります。
個々人にとっては、必要悪と感じ、心苦しく感じるときもあるでしょうが、それが人生というものかもしれません。

一見、豪快に言いたいことを言っているように思いながら、誰も否定せずに、人生の真理を伝える今東光師の回答は、さすがですね。

今日でも、小説以上に、人生相談の『毒舌身の上相談』が、読み継がれているのも、よく理解できます。

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