今東光の毒舌人生相談-その2「ウマの合わない上司」1
今東光師(こん-とうこう、1898生―1977没、天台宗大僧正、中尊寺元貫首)の『毒舌身の上相談』(集英社文庫)から、上司との人間関係に関するものをご紹介しましょう。
「私はいま、職場の上司とウマが合わなくて悩んでいる。とにかく顔を見るだけでも、飯もまずくなり、気分が悪くなってくる。といって、会社を辞めるわけにはいかないので、どうしたらよいか」
という相談に対する今東光師の回答です。
「それは、会社の上司にかぎらず、社会に出れば電車に乗っても、
向いに気に入らん奴が来ることだってある。
そんなこと言ったら、オレなんか全部気に入らねえよ。
親しい人以外はことごとく嫌いだわ。」
「だから、おめえも、そこの上司が気に入らないからって、
よそへ行ったところで、やっぱり気に入らねえ上司がいるさ。
なにしろ気に入らねえ野郎は、世の中にゴマンといるんだから。」
「それならいっそのこと、自分が気に入らねえ人間になった方が、
得じゃねえか。」
「相手が気に入ったとか、気に入らないとかってことを考えずに、
自分がたいがいの場合、嫌われるような人間になってた方が、
被害が少なくて済むわな。」
『毒舌身の上相談』(集英社文庫)より
上司のことが気に入らない、ウマが合わないという悩みは、組織に属する人にとって、永遠のテーマでしょう。
大抵の人には、気に食わない上司、嫌な上司の下で働いた経験があると思います。もしかしたら、尊敬できる上司の下で働けることのほうが幸運であるかもしれません。
逆に上司から見れば、何人か何十人かの部下がいれば、一人や二人は、気に入らない部下や後輩が必ずいることでしょう。
本来は、仕事を媒介として結びついているはずの職場においても、人間の相性は、必ずしも、仕事の能力だけで決まるわけではありません。
仕事の能力は、優秀でも、また、お互いにそれを認めていても、どうにも性格的にウマが合わないというケースもあるものです。