宇宙のなぞ-宇宙の誕生-2
「無」から宇宙が誕生して、ビックバンにいたるまでは、私たちから見れば、1秒より何十桁も短い時間ですから、まさに一瞬です。
もし、外から宇宙の誕生を見ていた人がいたとしたら、「無」の中から突然、直径1000キロの火の玉が出現したと見えるでしょう。まさに「ビックバン」(巨大な爆発)ですね。
しかし、「ビックバン」の前に、「インフレーション」によって、光よりはるかに速いスピードで宇宙空間が拡大したため、現在の宇宙の正確な大きさはわかりません。
人間が観測できる範囲は、光や電波の届く範囲です。その大きさは、宇宙が誕生してからの時間によって制約されます。
宇宙ができてから約137億年ですから、人間に観測できる範囲は、最大137億光年です。
現在、100億光年以上先の銀河などが観測されているそうですが、現在の技術がどんなに進んでも、基本的には、半径137億光年以上先の宇宙のことはわかりません。宇宙誕生から現在までに光も電波も地球に届かないからです。
しかし、半径137億光年で宇宙がすべてというわけではありません。
宇宙全体がどれほど広いのか、実は、まったくわからないそうです。
無限に広いという説もあれば、空間全体がボールのように曲がっていて、ずっと進むと元にもどってしまうという説もあるようです。
いずれにしても、私たちが生きている宇宙空間は、本当の宇宙全体から見れば、豆粒のように小さな領域のようです。宇宙全体がどのくらい広くて、どのようになっているのか、人間にはまだわからないのです。
ただ、人間が観測できる範囲の宇宙は、どこでも、同じような状態にあることが観測によってわかっています。これを宇宙論では、「宇宙は平らである」といいます。
「宇宙が平らであること」つまり、人間が観測可能な領域では、すべての宇宙は同じような状態であることを説明するために、ビッグバンの前に「インフレーション」という特別な現象があったと想定されたのです。
もし、「ビックバン」という爆発のような灼熱状態だけであれば、宇宙の中にさまざまなひずみがあるのが普通です。宇宙の右端と左端では、物理法則さえ違うかもしれません。
しかし、もともと、ごく小さな生まれたての宇宙が光よりはるかに速いスピードで拡大してから、ビックバンが起きたと考えれば、観測可能な宇宙が平らであることは、ごく自然のことになります。
しかし、観測できない137億光年よりさらに遠方の領域では、宇宙の姿は、私たちが見ている宇宙とは異なっているかもしれません。
さて、「宇宙」が「無」から誕生したとしたら、宇宙が誕生する前には何があったのでしょうか?
もし「無」から、宇宙が誕生したとしたら、宇宙を生み出す「無」とは、いったい何でしょうか?
物理学的には、「無」とは、「空間も時間も存在しない状態」としか定義できないようです。それ以上のことは、わかっていません。
にもかかわらず、「無」は宇宙を生み出しました。
さらに、不思議なのは、「無」から宇宙を生み出して、「インフレーション」を起こしたエネルギーとは何なのか?という問題です。
「無」あるいは「真空」が有する特別なエネルギーを「インフラトン」と呼びますが、そのエネルギーの正体も、まだわかりません。
さらに素粒子の世界では、今でも、何も存在しないはずの「無」あるいは「真空」の中から、常に沸き立つように素粒子が生まれては消えているそうです。
「無」とは本当に不思議な世界です。