形のない塔を建てよ!
■宇宙一杯の自己を悟れ(3/3)
普通の言葉でそのように言えば、粛宗(しゅくそう)は、「なるほど」と頭で理解できるでしょう。論理的に考える左脳による理解です。
しかし、それでは禅の修行になりません。禅は、ロジカルシンキングを超えた右脳による直観的な智慧を得る修行です。
そのために、忠国師(ちゅう-こくし)も耽源(たんげん)も、あえて謎のような言葉を投げかけて、疑問を起こさせようとしています。
粛宗(しゅくそう)の禅修行を深めて、立派な皇帝になってほしいという、本当の親切心から出た言葉でした。
「お釈迦(おしゃか)さまの眼から見れば、すべての人が、宇宙と一体という仏さまの性能を持っているが、かんじんの本人がそのことに気が付いていない。煩悩(ぼんのう)に眼をさえぎられているからだ。」
ということが禅の専門書には書かれています。
「形のない塔を建てよ!」とは、まず疑問を起こし、誰もが心の中に持っている素晴らしい宝物に、自分で気付くためのヒントであるといえましょう。
ビジネスにおいても、疑問を起こすことが改善のスタートラインになります。問題点を認識して、「どうしたら解決できるか?」、自分で工夫することが成長につながります。
他人から教わったスキルやノウハウに頼りすぎると、かんじんの疑問を起こす力が弱まります。それでは、進歩や成長のチャンスを自ら逃すことになるでしょう。
人は疑問を持つことから進歩すると、この禅話は教えてくれているのです。
<ここがポイント>
1.本当の極楽(ごくらく)は、人の心の中にある
2.禅とは、宇宙と自分が一体となった境涯をめざすもの
3.まず疑問を起こし、自分で工夫する姿勢が大事である
<10月のイス禅セミナー:ご案内>
「禅の知恵と古典に学ぶ人間学勉強会」(原則月1回開催)
イス禅と禅仏教の古典(『無門関』など)に学ぶセミナーを
10月21日(火)に、秋葉原駅近くの区民会館で開催します。
前半は、誰でもできるイス禅瞑想の実修です。
休憩後の後半は、禅の古典からの講話となります。
禅に関心のある方は、どなたでも参加できます。
日時:2014年10月21日(火)19時~21時(開場18時30分)
場所:JR秋葉原駅そばの「和泉橋区民会館」
(千代田区立の公民館)