無門関第35則「せい子が二人に分身した」
この話は、要するに、倩(せい子)という娘の肉体と魂(たましい)が分離して、二人に分かれていたという一種の怪談です。
一人は、遠い国で結婚生活をしていたが、もう一人は、自室で病気になって寝込んでいました。しかし、五年後に二人が対面すると、二人が合体して、一つに戻ったというお話です。
五祖法演(ごそ–ほうえん)禅師が活躍した11世紀の中国では、この怪談は、有名であったらしく、いくつかの本に収録されています。
さて、五祖法演(ごそ–ほうえん)禅師の公案に戻りましょう。
五祖法演(ごそ–ほうえん)禅師は、この怪談を踏まえて、
「倩(せい子)が二人に分身したという物語があるが、
結婚生活をしていた倩(せい子)が本物なのか?
それとも、自宅で寝込んでいた倩(せい子)が本物なのか?」
と問いかけています。
もう少し一般的な形にすれば、
「人が、肉体と魂(たましい)に分かれたとしたら、
いったい、どちらが本物なのか? さあ、言ってみろ!」
と修行者にせまる公案です。
肉体と魂(たましい)、身体と心、この二つは、私たちにとっては、
切っても切れない、どちらも大事なものです。
しかし、あらためて考えてみると、
はたして、どちらが、自分の本質なのでしょうか?
そもそも、「自分の本質」あるいは「本当の自己」とは、
何なのでしょうか?
この公案が、自己探求をテーマとする禅の教えに相応しい重要な問いであることが分かると思います。
(つづく)
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