無門関第38則「牛が窓をとおる」
『無門関』(むもんかん)を書かれた無門和尚(むもん-おしょう)の5代前の禅の祖師に、五祖法演(ごそ-ほうえん)禅師がおられます。
五祖法演(ごそ-ほうえん)禅師は、中国における臨済宗中興の祖といわれる大禅者で、後世にも大きな影響を与えました。
そのせいもあってか、『無門関』には、五祖法演(ごそ-ほうえん)禅師の公案が4つも採用されています。
今日は、その中から、第38則「牛過窓櫺(ごか-そうれい)」をご紹介しましょう。「牛過窓櫺(ごか-そうれい)」とは、「牛が窓をとおり過ぎる」という意味です。
では、まず、原文(漢文)の書き下し文をご紹介いたします。なお、難しいと感じる方は、書き下し文は、読み飛ばしても大丈夫です。
【原漢文の書き下し文】
『無門関』第38則 「牛過窓櫺(ごか-そうれい)」
「牛が窓をとおり過ぎる」
<本則(ほんそく)>・・公案そのもの
五祖(ごそ)云(いわ)く
たとへば水牯牛(すいこぎゅう)の
窓櫺(そうれい)を過ぐるが如(ごと)し。
頭角(ずかく)四蹄(したい)、
都(すべ)て過ぎ了(おわ)るに、
甚麼(なん)に因(よ)ってか、
尾巴(びは)、過(す)ぐることを得ざる?
<評唱(ひょうしょう)> ・・無門和尚の禅的な批評
無門(むもん)曰(いわ)く、
もし這裏(しゃり)に向って、顛倒(てんとう)して
一隻眼(いっせきげん)を著得(じゃくとく)し、
一転語(いちてんご)を下(くだ)し得(え)ば、
もって上(かみ)四恩(しおん)を報(ほう)じ、
下(しも)三有(さんぬ)を資(たす)くべし。
それ或(あるい)は、未(いま)だ然(しか)らずんば、
更(さら)に須(すべから)く、
尾巴(びは)を照顧(しょうこ)して始めて得(う)べし。
<頌(じゅ)>・・無門和尚による禅的な漢詩
頌(じゅ)に曰(いわ)く
過ぎ去(さ)れば、抗塹(こうざん)に堕(お)ち、
回(かえ)り来(きた)れば、却(かえ)って壊(え)せらる。
者些(しゃさ)の尾巴子(びはす)、
直(じき)に是(こ)れ甚(はなは)だ奇怪(きかい)なり。
以上が、原漢文の書き下し文ですが、
これだけでは全く意味が分からないと思いますので、
つづけて現代語訳を掲載します。