禅の知恵と古典に学ぶ人間学勉強会(16)開催しました。

2015-07-16

禅の知恵と古典に学ぶ人間学勉強会(16)開催しました。

この勉強会では、誰でもできる禅的な瞑想法として、イス禅を皆さんと一緒に実習します。
その後、『無門関』(むもんかん)、『碧巌録』(へきがんろく)など禅の古典から、現代に生きる私たちにも役立つ禅の話をご紹介させて頂きました。

ただまっすぐに行け!

中国の唐の時代に活躍した趙州(じょうしゅう)和尚には、たくさんの禅話がありますが、今日も、その一つをご紹介いたしましょう。

さて、趙州の禅道場の近くに五台山という霊場に行く街道がありました。五台山は、日本でいえば、高野山や比叡山のような場所であり、遠くからはるばる旅をして多くの参詣者が訪れていました。

その五台山に向かう街道に小さな茶店がありました。テレビドラマで水戸黄門のご一行がよく休憩している茶店のようなものを想像してください。1千年も前の時代ですから、地図も十分に整備されていないので、この街道が、本当に正しい道なのか、茶店の人に聞きながら旅をするのが普通のことだったようです。

五台山に向かう巡礼の中には、当然若い修行僧もいて、茶店の店主であるおばあさんに「五台山に行くには、どちらにいったらよいのですか?」と尋ねました。

すると、そのたびに、おばあさんは、「ただ、まっすぐに行きなされ!」と答えました。僧が教わった方向に歩き出すと、その後ろから、「立派な坊さんなのに、またあんな方に行きよったわ!」と冷笑の言葉を浴びせたそうです。

みなさん、なぜこの僧はおばあさんに冷笑されてしまったのでしょうか。

五台山への道は、禅の修行僧が、真理を求める道でもありました。

しかし、禅の修行者にとって、真の霊場への道は、ほかならぬ自分の心の奥底にあります。心の眼を開いて自己をしっかりと見つめることが、根源的な真理への道です。いいかえれば、日々の生活の中で自分を見失わないことが、五台山へ道であるといえます。

茶店のばあさんは、修行僧にそのことを気づかせたかったのでしょう。五台山への道が自分の中にあることを気づかずに、巡礼への道を尋ねる修行僧に対して、
「わざわざ五台山にいくまでもない。まっすぐに自己を見つめることが真の修行じゃ!」という意味で、「ただ、まっすぐに行きなされ!」と答えたのでした。

茶店のばあさんは、私たちに対して、「足元を見つめ、逃げずに目の前の課題にとりくむことこそ、幸せへの道だ」と教えているのでしょう。

ポイント

禅の知恵と古典に学ぶ人間学勉強会

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