自己の存在価値を自己において見出す
マズローは、人間には、5つの欲求が段階的にあるという欲求段階説を唱えました。
その中で低次の「1.生理的欲求」「2.安全欲求」「3.社会的欲求」は、人間と外界(自然や他人や社会)との関係に関する欲求です。
それらがある程度、満たされたとき、人間はさらに高次の欲求を求めるとマズローは言います。それが、「4.尊厳欲求」や「5.自己実現欲求」です。
4.尊厳欲求(Esteem)
自分が集団から価値ある存在と認められ、尊重されることを
求める欲求です。
低いレベルの尊厳欲求は、他者からほめられること(尊敬や賞賛や
注目を得ること)によって満たすことができます。
しかし、より高いレベルの尊厳欲求では、仕事の達成、技術や能力の
習得による自己信頼感など、他人からの評価よりも、
自分自身の評価が重視されます。
5.自己実現の欲求(Self-actualization)
自分の持つ能力や可能性を最大限発揮し、「あるべき自己」になりたいという欲求です。芸術家による創作活動や、学者による研究活動など、創造的な活動そのものによって満たされる性格のものです。
マズローによれば、「人間は自己実現に向かって、絶えず成長する生きもの」であり、すべての動機が、最後は、自己実現欲求に帰結するとされます。
これら高次の「4.尊厳欲求」や「5.自己実現欲求」は、低次の「1.生理的欲求」「2.安全欲求」「3.社会的欲求」より内面的な欲求です。
いわば、自分と自己との関係において充たされたいという欲求であると言えるでしょう。
他人の評価よりも、自分で自分を評価できるかどうかが問題になるというレベルです。
マズローの欲求段階説は、上記の5つの階層で人間の欲求を説明したました。
しかし、マズローは晩年になると、「自己実現の欲求」よりさらに高いレベルの欲求として「自己超越の欲求」があると考えるようになりました。
マズローのいう「自己超越欲求」とは、有限の自己を超えて、永遠なものに向かいたいという宗教的な欲求のことではないでしょうか。
このような高次の欲求に応える一つの方法として、禅の教えを捉えることができると思います。