『日本的霊性』とは?ー1(現世利益について)

2013-05-03

「利益(りえき)」という言葉は、「もうけ」という意味で世間一般で使われています。
会計士である私にとっては、最もよく使う会計用語の一つでしょう。

しかし、もともとは、「利益(りやく)」と読んで、仏教用語でした。
この世で受ける利益を「現世利益(げんぜりやく)」といい、
後の世で受ける利益を「後世利益(ごせりやく)」などとも言います。

 人は誰でも幸福になりたいのですから、人々の苦しみを救うための仏教の教えが「現世利益(げんぜりやく)」をといても不思議はありません。

 伝統的な仏教の宗派は、それほどでもないかもしれませんが、
新興宗教の中には、信仰によって「幸福になる」「病気が治る」「お金持ちになれる」「現世で成功できる」と「現世利益」を積極的に説いているところもあるようです。
 
 しかし、私自身は、それを否定する気持ちはありません。
もし、その教えを信じた人が人生に希望をもって前向きに生きられるようになるならば、確かに「現世利益」があると思うからです。
 多くの人が幸せになるということは、本来、素晴らしいことでしょう。

 ただ、問題なのは、そのために教団に支払うお布施があまりに高額な場合でしょう。詐欺として告発されて2001年に解散した宗教法人「法の華三法行(さんぽうぎょう)」などは、その代表と言えるでしょう。

 私が学生時代からご縁のあった人間禅道場も、臨済宗系の単立宗教法人です。明治時代からの歴史があるとは言え、広い意味では新興宗教法人といえるでしょう。
 しかし、宗教法人とは思えないほど、「現世利益」の話はありませんでした。

道場では、もっぱら、「禅の修行による人間形成」ということを教えられました。世間的な成功があるとすれば、その結果であって、目的ではないということです。
もちろん、「人間形成=世間での成功」ではありません。人間的に素晴らしい方でも、諸般の事情で、仕事に失敗することもあります。

人間禅の第2代総裁の妙峰庵(みょうぶあん)佐瀬孤唱(させ-こしょう)老師なども、世間的には随分とご苦労されたようで、決して世間的な成功者とは言えません。
しかし、お亡くなりになって40年近くなるというのに、在世中に薫陶を受けた方々は、ひと時も老師のことを忘れずに、そのご指導やお人柄をお慕いになられています。

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