『無門関(むもんかん)』について

2014-06-05

まずは、『碧巌録(へきがんろく)』と並んで、日本の禅界、とくに臨済宗系において昔から大事にされて来た『無門関(むもんかん)』から禅の話をご紹介していこうと思います。

なぜ『無門関(むもんかん)』かというと、『碧巌録(へきがんろく)』に比べて、本文の分量が少なく、簡潔明快だからです。

岩波文庫のページで比べますと、『無門関(むもんかん)』は、漢文に書き下し文と現代語訳のほか訳注がついて、216ページという文庫本としても比較的薄い1冊です。

『碧巌録(へきがんろく)』は、岩波文庫で上中下3冊に分かれており、各冊が300ページ以上あり、3冊を合わせると約1千ページの分量になります。しかも、『碧巌録(へきがんろく)』の岩波文庫本は、現代語訳をつけず、漢文と書き下し文だけです。

岩波文庫のページ数で比べただけでも、『碧巌録(へきがんろく)』と『無門関(むもんかん)』の規模の違いは明らかです。

さて、『碧巌録(へきがんろく)』も『無門関(むもんかん)』も、古来、最も大事にされて来た公案集(禅問答の問題集)ですから、たくさんの提唱録(ていしょうろく)が出版されてきました。

提唱(ていしょう)とは、摂心会(せっしんえ)などの本格的な禅修行の会において、老師が修行者に向けて禅の眼目を講義するものです。通常は、『碧巌録(へきがんろく)』など禅の語録をテキストにして、一日1回の提唱につき1則のペースで進めていきます。

『碧巌録(へきがんろく)』は、100則ありますので、全部を提唱するのに、何年もかかるのが普通です。その提唱を筆録したものが提唱録(ていしょうろく)ですが、仏教を専門とする古書店にいけば、明治以降において印刷された出版本だけでも、おそらく100にせまる『碧巌録(へきがんろく)』の提唱録があると思われます。

もちろん『無門関(むもんかん)』にも、たくさんの提唱録があります。本文が簡潔なこともあり、『碧巌録(へきがんろく)』より提唱録の数はずっと多いでしょう。

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