安岡正篤先生の本との出会い

2014-02-09

私が安岡先生の本と出会った昭和50年代後半、つまり1980年代前半は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれた時代です。

欧米が、石油ショックをきっかけに1970年代後半からスタグフレーション(高い失業率かつ高インフレ率)に苦しんでいた時に、日本は、石油ショック後のインフレを省エネ努力で克服し、先進国の中で最も安定的な経済成長をつづけていました。

当時の日本は、経済的に世界最強であると海外のエコノミストから評価され、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれたわけです。
(もともとは、社会学者エズラ・ヴォーゲルが日本経済の強さを分析してベストセラーになった1979年の著書『ジャパン・アズ・ナンバーワン』から来た言葉です。)

その後、1980年代の日本経済は、景気の山や谷はあったものの、安定的な成長力を維持したまま、1980年代後半のバブル景気につながりました。
バブルの頃は、欧米が日本の経済力に脅威を感じるほどで、1980年代の日本は、経済力では、たしかに世界一の強さを誇っていたと思います。

当時、学生だった私は、政治に関心がありませんでしたが、ソ連や中国、東欧など社会主義国も経済的には大変苦しい状況にあることは、新聞などで知り、マルクス主義が経済学としてはすでに破たんしていることを感じていました。
また、戦後の日本が、追い付き追い越せと目標にしてきたアメリカも西欧諸国も、経済面では、すでに日本の目標とは言えない状況になったことも感じていました。

おそらく多くの日本人が、資本主義にしても、マルクス主義にしても、日本がキャッチアップの目標とすべき国がなくなりつつあることを感じた時代であったと思います。

それだけに、多くの日本人が、「なぜ日本はこれほどの経済的成功を収めることができたのか?」と考え始め、日本の歴史を正当に評価しようという動きが出始めた時代が1980年代だったのではないでしょうか。

そのような時代背景の中で、それまで左翼的な風潮の強い言論界からは、戦前の軍国主義の精神的支柱のようなレッテルを張られて、マイナス評価で見られていた安岡先生のご著書が、あらためて正当な評価を受ける時代になって来たのだと思います。

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