禅の効用② 「体に対する効果」-1

2013-01-13

(1)セロトニンとの関係

まず、禅の「体に対する効果」ですが、これについては、脳内神経伝達物質の世界的研究者である有田秀穂先生がセロトニンとの関係を指摘されています。有田先生のご著書から、要点をかいつまんでお伝えしたいと思います。(より詳しく知りたい方は、有田秀穂著『脳からストレスを消す技術』(サンマーク出版)をお読みください。)

 脳には、50種類以上の神経伝達物質がありますが、その中で、人間の意思や感情に強い影響を与えるのは、ドーパミンとノルアドレナリンとセロトニンの3つです。

そのうち、ドーパミンは、脳を興奮させる物質のひとつで、ドーパミンが出ると快感や陶酔感を覚え、「意欲」を高めることにもなります。目標達成のために努力して達成感を味わった時に、ドーパミンが出ることによって、人間は大きな快感を感じます。その反面、努力しても十分な結果が出ず、達成感を味わえなかったときは、快が不快に転じて強いストレス要因になります。

ドーパミンが適量であれば、意欲やポジティブな心の状態になりますが、過剰に放出されると各種の依存症になる恐れがあります。統合失調症も、ドーパミンの過剰放出と関係があるのではないかといわれています。
 
 ノルアドレナリンも、脳を興奮させる物質ですが、ドーパミンと異なり、各種のストレスを感じると放出されて、怒りや危険に対する興奮をもたらします。ノルアドレナリンは、脳を覚醒させ、注意力・集中力を増したり、判断力や積極性を高めます。

ノルアドレナリンも適量であれば、脳に適度な緊張をもたらし、仕事や勉強の能率を上げることになります。半面、ストレスが強すぎて、ノルアドレナリンが過剰放出になると、脳が過緊張になって、恐怖や不安の気持ちが強くなり、かえって脳の機能を低下させることになります。そのため、不安神経症やパニック障害、また、うつ病にも関係していると考えられています。

 セロトニンは、行動には抑制的に働くが気分は興奮させる方向に働くという複雑な物質です。基本的に脳を覚醒させますが、ノルアドレナリンのような激しい興奮ではなく、「クールな覚醒」(有田秀穂、前掲書)をもたらします。

セロトニンが適量に分泌されていれば、ドーパミンやノルアドレナリンの暴走を防いで、脳全体のバランスを整え、心に平静をもたらすものです。セロトニンが過剰放出されると「幻覚」をみたり、不安神経症になったりするようですが、セロトニンの放出量はストレスによる影響を直接受けないため、通常は過剰になることはほとんどないようです。
むしろ、セロトニンが不足することによって、脳全体のバランスが崩れ、うつ病や偏頭痛になることの方が大きな問題です。

有田先生は、現代人は、過度なコンピュータ操作、運動不足、昼夜逆転の生活などにより、慢性的なセロトニン不足の状態にある人が増えていると指摘されています。
そのせいでしょうか、現在、日本では、うつ病が大幅に増加してきています。

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