禅の効用⑦ 「体に対する効果」-6

2013-01-13

(5)脳波と自律神経への良い効果

 坐禅中の脳波や体への影響については、昭和30年代から40年代にかけて、東京大学医学部の平井富雄先生が世界で初めて詳しい医学的な研究を行いました。その結果は、世界を驚かせました。

 人間が起きて活動しているときは、通常、ベータ波という脳波が出ています。興奮したり、緊張が高まるとガンマ波というより速い(細かい)脳波が出ます。

 目を閉じて心身ともにリラックスするとアルファ波というベータ波よりも遅い脳波がでて、睡眠時には、アルファ波よりもさらに遅い、シータ波やデルタ波が出てきます。

 しかし、緊張してイライラ、クヨクヨしているときは、目を閉じて安静にしても、アルファ波が出ず、ベータ波が出ているそうですから、人間の心の健康のためには、アルファ波が多く出るようにすることが有効です。

 アルファ波が出ているときは、悩みや緊張から解き放たれた安定した精神状態にあるということです。

 平井先生の実験によれば、ベテランの禅僧は、坐禅中に半眼(はんがん)といって目を開けている状態にもかかわらず、坐禅開始から1分程度でアルファ波が脳全体から出ることがわかりました。
 通常ならば、目を閉じて安静にしても、なかなかアルファ波が出ない人がいるのに、禅のベテランは、坐禅中、安定的にアルファ波が出続けました。

 中には、目が覚めているときには出るはずのないシータ波まで出る禅僧もいました。また、アルファ波は、坐禅終了後も余韻としてしばらく残り、中には30分の坐禅のあと5分以上もアルファ波が続いた禅僧もいたそうです。

まったくの坐禅をやったことのない学生に坐禅の方法をおしえて、同じように脳波をはかったところ、ベテランほどではないにしても、ある程度はアルファ波が出ることもわかりました。

また、坐禅の経験年数の異なる人たちの脳波を研究すると、坐禅に熟達するにつれて、アルファ波の出方が大きくなることもわかりました。

つまり、坐禅によって、アルファ波の出るリラックスした状態を意識的に作り出せることがわかったわけです。

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