自己の存在価値を自己において見出す

2013-12-12

凡夫たる私たちは、日々の忙しさの中に外面的な充実感を感じて、
それを「自分の存在価値である」と思って、内面的な虚しさを忘れて生きるケースが多いと思います。
そもそも、「自分の存在価値」などということを考える暇さえないかもしれません。
「自分の存在価値」に悩まないということは、ある意味、自己充足しているわけで、それはそれで充実した良い人生なのだと思います。

しかし、アメリカの心理学者マズローの「欲求段階説」などに示されるように、人間の欲求には、いくつかの段階があります。
あるレベルでは満足できたと思っても、今度は、次のレベルの欲求が起こってきて、最後は、自己実現の欲求に高まっていくと考えられます。
「自分の存在価値」の問題に悩んでいる人は、低次の欲求は満たされていても、高次の欲求が満たされていないのでしょう。
より高次の欲求を求めることが人間の本性である以上、「自分の存在価値」の悩みは、誰にでも起こりうる悩みであると思います。

さて、それでは、じーっと座って、坐禅をすることが、どうして「自分の存在価値の悩み」の解決につながるのでしょうか?

坐禅によって本当に「自己実現」できるのか?、と不思議に感じる方もおられるかもしれません。
私は、坐禅による解決があるとすれば、それは、「自己実現」とは、別次元の「自己超越」によるものであると思います。

「自己超越」も、マズローが晩年に主張した考え方で、1970年代以降に発達したトランスパーソナル心理学の基本となる概念の一つです。

「自己実現」と「自己超越」のことを考えるために、まず、マズローの欲求段階説を確認しておきたいと思います。

マズローの理論によれば、人間の欲求を基本的なレベルから並べると、以下の5つの段階があるとされます。

1.生理的欲求(Physiological needs)

2.安全欲求(Safety needs)

3.社会的欲求(Social needs / Love and belonging)

4.尊厳欲求(Esteem)

5.自己実現欲求(Self-actualization)

人間は、低次の欲求が満たされると、より高次の欲求が起こり、最後は、自己実現を欲するようになるとマズローは考えました。では、5つの欲求の内容を確認しましょう。

1.生理的欲求(Physiological needs)

生命を維持するのための基本的・本能的な欲求(食べたい、寝たいなど)です。

2.安全欲求(Safety needs)
安全・安心な暮らしがしたいという欲求です。
そのために、経済的安定性や良い生活水準、健康などが求められます。

3.社会的欲求(Social needs / Love and belonging)
他者に受け入れられているという感覚に対する欲求です。
特定の集団に属したり、仲間が欲しくなったりするという当たり前の欲求ですが、この欲求が満たされないと、人は孤独感や社会的不安を感じやすくなり、時には、うつ病になったりします。

ここまでの3つの欲求は、人間にとって、より基本的ですが、外的に、他人や世界との関係において充たされたいという思いから出てくる欲求です。

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