自己の存在価値を自己において見出す

2013-12-12

お釈迦さまのように、豊かで社会的地位が高くても、今の人生に満足できず、別次元の救いを求める方が、実際に、内山老師のところにこられたこともあったようです。

ある日、内山老師のところに、仕事や家庭生活においては、十分に恵まれた生活をしながら、なお、心の虚しさを感じてしょうがないというアメリカの大会社の社長さんが人生相談にこられたことがあったそうです。

<内山興正(こうしょう)老師の解説-2>

昭和44年(1969年)のころ、あるアメリカの大会社の社長が私の所へやって来た。そして彼がいうには、
「私は家庭的にも恵まれています。経済的にも豊かです。
しかしなぜかこのごろ、とても虚しく、
さびしい思いがしてならない。
 これはいったいどういう訳でしょう」

というのです。

それで私はいってやった。
「あなたは、あなた自身を知らないからだ。
あなた自身に、なっていないからだ」と。

昭和44年つまり、1969年とは、アポロ11号が月面に着陸し、人類が、地球以外の星に初めて降り立った記念すべき年です。
アポロ計画のスタートは、1961年でした。当時のケネディ大統領が、アメリカ議会で演説し、1960年代の終わりまでに人間を月面に到達させるという壮大な計画が始まりました。
ケネディが議会演説した時点では、まだ地球を一周する程度の有人宇宙飛行にやっと成功した段階でしたから、10年以内の月への有人飛行ということが、どれほど壮大で、無謀なほど勇敢な計画であったか、科学の素人にも想像がつきます。

そして、ケネディの演説から、わずか8年で、アメリカは実際に月面着陸に成功するのですから、1960年代のアメリカの経済力や技術力は、世界でも突出したものがあったと思います。
1960年代のアメリカは、間違いなく、世界で最も豊かな国であり、高度成長期にあった日本人にとって、目標であり、憧れであった国かもしれません。

余談ですが、1969年7月20日に、アポロ11号は月面に到達し、アームストロング船長とオルドリン飛行士が人類として初めて月面に降り立ちました。
当時、私は、小学校2年生ですが、小学校の教室の白黒テレビで、月面着陸のシーンを見た記憶があります。
それは生放送ではなく、録画によるニュース映像だったかもしれませんが、小学校2年生の記憶にも残るくらい、世界中が興奮した大ニュースでした。

翌年1970年の大阪万博には、半年間に6千万人の来場者が詰めかけ、日本中が万博ブームにうかされていましたが、その中でも、アメリカ館は最高の人気でした。
私も、親に連れられて夏休みに大阪万博にいきましたが、アメリカ館に入場するのに、2時間以上も並んだ記憶があります。
そのアメリカ館の主要な展示物は、アポロ計画関係の展示であり、中でも、本物の「月の石」が最大の目玉でした。

実際に実物の「月の石」を見てみると、なんということもない普通の石なのですが、子供心にも、そこだけ特別に光り輝いているように感じたものです。
おそらく、「月の石」は、科学進歩の成果の象徴であり、また、宇宙時代の到来という輝かしい未来を期待させるものとして、私たち子供の目に写ったと記憶しています。

昭和44年(1969年)とは、アポロ計画に象徴されるように、科学の進歩とそれを支える経済発展に無限の可能性を感じることのできた明るい時代であったように思います。

反面、ヒッピームーブメントや世界中で起こった大学紛争などに示されるように、公害問題など豊かな社会の暗黒面も見え出して、精神世界に対して人々の目が向けられるようになった時代でもあります。

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