禅の知恵と古典に学ぶ人間学勉強会(22)開催しました。
2016年1月22日禅の知恵と古典に学ぶ人間学勉強会開催しました。
<第一部>イス禅の実習
イス禅などの瞑想により、心が「空(くう)」に近づく時間をもつことで、自然と心の宝物「仏性(ぶっしょう)」が輝きだすといえます。
「空(くう)」とは、禅仏教が考える最高の境地であり、仏様(サムシンググレート)の世界と一体になったところといえます。イス禅などの瞑想法は、心を「空」にすることで、仏様に近づいていく方法といえるでしょう。
禅の効用
- 心を「空」にすることで、心が安らぎ、ストレスが溶けていく。
- 潜在意識のレベルで創造性が高まる。
- しなやかで折れにくい心(平常心)が養われる
<第二部>禅の古典に学ぶ 無心の境地を求める “心を持ってこい!”
中国に初めて禅の教えを伝えた達磨大師とその後継ぎになった慧可(えか)との、禅の真髄を伝える禅問答として有名なエピソードです。
達磨大師に弟子入りを許された慧可は、かねてからの悩みを達磨大師にぶつけました。
慧可「わたしは、どうしても、不安で不安でたまりません。
どうか、この不安に悩む心を静めてください。」
達磨大師「そうか、お前は、不安で困っているのか。
その不安な心をここに持ってきてごらん。安心させてあげよう。」
達磨大師からこの言葉を言われてから、慧可は、何週間か、何か月か、もしかたら、何年間かの月日を禅の修行に打ち込みました。達磨から言われた「心を持ってこい」という言葉は、慧可にとって公案(こうあん:禅の修行者を導く問題)そのものでした。
「ついに心をつかまえることはできない」とはっきり自覚した慧可は、達磨のもとにいって次の問答をしました。
慧可「探しても探しても、心はどうしても、つかまりません。」
(原文は漢文ですので、「心を求むるに、ついに、不可得(ふかとく)なり」となっています。)
達磨大師「お前のために、安心させてやったぞ」
この禅問答の眼目は、慧可の「不可得なり」というところです。
「悩みで苦しんでいる心を得られない、捕まえられない」ということは、要するに実体としての心は存在しないということです。心を探そうとする自分の心が、そのまま自分のすべてであって、それ以外に自分の実体はないことを、はっきりと慧可は悟ったのでした。達磨大師に導かれて、「無心」という境地に慧可は到達したといえるでしょう。
※無心というのは、心を無くすという意味ではなく、ありのままの全ての自分を受け入れることである。
達磨大師が慧可(えか)に言った「お前を安心させてやったぞ」という言葉は、老師方の講義録を見ますと、達磨(だるま)が慧可(えか)をおほめになった言葉だそうです。
「よく悟ったな。それでいいじゃないか。悩む心がなかったら、何の心配もいらんぞ。」ということですが、そもそも「お前はもともと存在しない影のようなものを恐れて苦しんでいたのではないか」という響きがそこにあると解説されています。
”自分を忘れる工夫”
私たちは、悩める慧可のように、様々な不安や悩みに心をとらえられ、とても苦しい思いをすることがあります。苦しむことは、とても尊いことで、その苦しみを乗り越えることで、人間は大きく成長していくことができます。
しかし、さらに高い見地からみれば、いいかえれば、サムシンググレート(神や仏や天など)の見地からみれば、人間は、常に自分の運命を生きているのであり、苦しみも悲しみも、その人の一回限りの大事な人生の欠かせない一コマといえるでしょう。
苦労や努力の結果がどうであれ、運命を素直に受けとめて、現在を精一杯に生きることに人間の本当の価値があり、その積み重ねで、人として成長し、人生が良い方向に開けてくるのだと思います。
達磨大師が、慧可に伝えたかったことは、「無心(むしん)」ということにあると思います。無心といっても、何も考えないという意味ではありません。ただ真剣に目の前のやるべきことに打ち込んでいく心のあり方を言っています。
「不安だ、不安だ」と不安な心に捉われていると、ますます不安になるのが人間です。それよりも、不安や悩みのただ中で苦しみながらも、目の前の仕事や日常生活に心をむけて、それに打ちこむことによって、不安や悩みが自然に解決できるということをこの禅問答は教えてくれているように思います。
そのためには、自分に捉われずに、無心の境地になって、素直に他人の長所を評価し生かすことが大事なのだと思います。
これは、かの松下幸之助の言葉にもよく表れている。
「すべての人を自分より偉いと思って仕事をすれば、
必ずうまくいくし、とてつもなく大きな仕事ができるものだ」
<ここがポイント>
1.無心に目の前のことに打ち込むことで、運命が開ける。
2.自分を忘れることで、他人を生かすことができる。
3.まわりの人を偉いと思うくらいの広い心が成功をもたらす。