「宇宙とぶっつづきの自己」
2013-10-20
80年代の日本や90年代以降の欧米のように、バブルに乗って踊れば、一時的には好景気になります。
しかし、バブルの中で貧富の格差が拡大し、やがてバブルが崩壊すれば、大不況になります。
90年代以降の日本のようにバブルに乗らずに、地道に経済活動をしていれば、大不況は避けられるかもしれませんが、好景気も来ないということになりがちです。
ほかの要因もあるとは思いますが、結果的に、日本では、長期デフレ不況がだらだらと続いているような閉塞感があります。
国家レベルで好景気にならなければ、個々の企業や個人が頑張っても、努力の割になかなか報われない、という苦しい状況が続きます。
沢木老師が活躍された半世紀前に比べて、日本は、物質的には、はるかに豊かになりました。
しかし、将来に明るい希望が持ちにくい閉塞感に満ちた時代になってしまいました。
このような閉塞感に満ちた時代こそ、
「小さな自分、自分という自分中心の思いを投げ出すことが、
宇宙とぶっつづきの生命を今、ここで生きるということ」
という禅の智慧が必要なのかもしれません。
21世紀になって、日本が世界から最も尊敬されたのは、東日本大震災後の被災者の皆さんの毅然とした落ち着いた対応でしょう。
津波によって、家族を失い、家や財産を失っても、自分を見失うことなく、被災者同士が助け合っていました。
未曾有の天災に際して、日本人が無意識に示した態度こそは、
「小さな自分、自分という自分中心の思いを投げ出す」
態度ではないでしょうか。
沢木老師の教えは、それを常に忘れるなという私たちへの呼びかけであると思います。
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