今東光の毒舌人生相談-その2「ウマの合わない上司」(2)
人間の個性は、千差万別です。人間を取り巻く生活環境も千差万別です。育ってきた環境も千差万別です。
千差万別の人間が集まるのが職場ですから、気が合わない、ウマが合わない人は、どこの職場にも必ずいることでしょう。
ある意味、当然のことですが、今東光師は、それを他人事とせずに自分に引きつけて端的に語ります。
「そんなこと言ったら、オレなんか全部気に入らねえよ。
親しい人以外はことごとく嫌いだわ。」
「なにしろ気に入らねえ野郎は、世の中にゴマンといるんだから。」
『毒舌身の上相談』(集英社文庫)より
今東光(こん-とうこう)師にこう言ってもらえると、なぜか安心感を感じますね。
今の若い世代は、友達の目線をたいへん気にして、友達関係を円滑にすることに神経を使う傾向が強いそうです。
繊細な日本人らしい他人を思いやる優しい気持ちの現れであり、悪いことではありませんが、何事も、程度問題があります。
それに対して今東光師の回答は、いかにも肝が太い、図太いという感じがします。
では、
「気に入らない奴がたくさんいるということを前提に、
世の中をどのように生きていったらよいか」
という問題についての今東光師の回答は、ちょっと驚く内容です。
「それならいっそのこと、自分が気に入らねえ人間になった方が、
得じゃねえか。
相手が気に入ったとか、気に入らないとかってことを考えずに、
自分がたいがいの場合、嫌われるような人間になってた方が、
被害が少なくて済むわな。」
どうせ全ての人と、ウマが合うことはないのだから、「自分が嫌われるような人間になれ」というものです。
そのほうが「被害が少なくて済む」というのですから、思わず笑ってしまいます。今東光師一流の毒舌説法です。
しかし、この回答の本当のポイントは、
「相手が気に入ったとか、気に入らないとかってことを考えずに」
というところにあると思います。
普通の言い方に翻訳すれば、「他人との関係に振り回されない自主性を持て」ということでしょう。