布施(ふせ)し合う中に生きる
以前、世界的な遺伝子学者である村上和雄先生(筑波大学名誉教授)の講演を拝聴したことがあります。
村上先生は、軽妙な語り口で、ユーモアたっぷりに話されましたが、講演で伝えたいことは、
「遺伝子を研究しているとサムシンググレート(人知を超えた偉大なる存在、神仏や創造主など)がいて、生命を作り出したとしか思えない。生命は実に神秘に満ちた尊いものである」
ということだけだという意味のことを強調されました。
村上先生によると、人間の身体を形作る約60兆の細胞の一つ一つに肉眼では見えない遺伝子が入っているが、一つの小さな遺伝子に入っている情報量は、約30億文字分にもなるとのことです。
通常のビジネス書は、1冊当たり10万字程度の文字量ですから、一つの遺伝子には、ビジネス書3万冊分の膨大な情報が含まれていることになります。
このような膨大な情報を誰が遺伝子に書き込んだのか?
もちろん、人間が書いたわけではなく、「サムシンググレートが書いたのではないか」と考えざるを得ないというのが、村上先生の見解です。
それに対して、遺伝子に含まれる30億文字の情報といっても、コンピューターのバイト数に換算すれば、750メガバイト程度であり、CD-R1枚に収まる程度の小さなデータ量ではないかという意見もあります。
しかし、ヒトの細胞の大きさは、直径0.01ミリ~0.1ミリほどしかなく、その中にある遺伝子の大きさは、まさに顕微鏡サイズです。そのわずかなスペースにCD-R1枚分の情報が格納されていたとしたら、やはり驚異的と言わざるを得ないでしょう。
さらに、同じ人間ならば、すべての細胞において同じ遺伝子を持っているのですが、それにもかかわらず、身体を構成する60兆の細胞が有機的に連携して、頭から内蔵、手足まで、形も働きも異なる複雑な臓器を作り出しています。大部分の臓器は、人間が意識することなく、おのずから有機的に動いて生命を維持してくれているのですから、ただただ、すごいとしか言いようがありません。
現代のパソコンは、何十ギガバイト規模(時にはテラバイト規模)のハードディスク容量を持つわけですが、自分で考えることも、バグ(間違い)を自動修復することも、自己増殖することもできません。
記憶力とプログラムに基づく計算力は抜群ですが、考える力のないという点では、まだまだ頭の悪い機械です。SF映画の中に出てくるような、人間と対話できるレベルで自分で思考するコンピュータは、現時点では、夢のまた夢でしょう。
わずか750メガバイトの情報量で、人間の複雑な身体をつくり維持できる遺伝子というものは、スーパーコンピュータも及ばないすごい存在だと思います。
はたして、このようなすごい遺伝子を誰が作り出したのでしょうか?
村上博士でなくても、サムシンググレート、つまり、神さまや仏さまの存在を信じたくなります。