般若心経について-その1「はじめに」(2)

2013-05-03

さて、『般若心経(はんにゃしんぎょう)』の主人公というべき、観自在菩薩(かんじざいぼさつ)は、もともとのインドの経典(サンスクリット語)では、「アヴァローキテーシュヴァラ」でという名前です。

観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)も、サンスクリット語では、同じ名前「アヴァローキテーシュヴァラ」です。

しかし、中国で漢文に翻訳するときに、翻訳者によって、異なる名前に翻訳されました。

「観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)」と訳したのは、5世紀初めに仏典漢訳で大活躍した鳩摩羅什(くまらじゅう)です。

『妙法蓮華経(みょうほうれんげきょう)』(略して『法華経(ほけきょう)』)の翻訳で、「アヴァローキテーシュヴァラ」という菩薩を「観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)」と訳しました。

鳩摩羅什(くまらじゅう)は、「訳聖」といわれるほどの名翻訳者です。
特に、鳩摩羅什(くまらじゅう)が訳した『妙法蓮華経(みょうほうれんげきょう)』(『法華経(ほけきょう)』)は、今でも日本で一般的に読まれています。

中国の天台宗の実質的な開祖である天台大師智顗(てんだいだいし-ちぎ)が、鳩摩羅什(くまらじゅう)訳の『法華経』を最高位の経典として位置づけたことなどから、中国でも日本でも広く親しまれました。

いわゆる『観音経(かんのんきょう)』は、『法華経(ほけきょう)』の第25章にあたります。

『観音経(かんのんきょう)』の正式名称は、『妙法蓮華経(みょうほうれんげきょう)観世音菩薩普門品(かんぜおんぼさつふもんぼん)第二十五(だいにじゅうご)』という長い名前です。

 それに対して、「アヴァローキテーシュヴァラ」を「観自在菩薩(かんじざいぼさつ)」と訳したのは、、「西遊記(さいゆうき)」の三蔵法師(さんぞうほうし)のモデルになった玄奘(げんじょう)でした。

 玄奘(げんじょう)は、7世紀の唐の時代に、中国からインドまで困難な大旅行を行い、インドに向かって唐の国を出発してから、16年後にインドから多数のサンスクリット語のお経を唐の都、長安に持ち帰りました。

 『般若心経』は、10回以上も中国語に訳されていますが、玄奘(げんじょう)の翻訳が素晴らしく、玄奘訳が今日でも一般に読まれます。

 その『般若心経』では、観音さま(観世音菩薩)が、玄奘訳によって「観自在菩薩(かんじざいぼさつ)」となっています。

観自在菩薩(かんじざいぼさつ)も観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)も、「自由自在に、世間の声を、人々の心の悩みや苦しみを観察されて、それを救ってくださる仏さま」という意味です。

仏教の慈悲の心を象徴する仏さまです。

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