『禅と陽明学』より「儒教と老荘と禅」

2014-02-26

紀元前5世紀の春秋戦国時代に活躍した孔子を始祖とする儒教は、中国固有の思想です。

また、同じく紀元前の春秋戦国時代に書かれたと思われる『老子』(ろうし)や『荘子』(そうじ)を経典とする老荘思想も、中国固有の思想です。

それに対して、禅などの仏教思想は、インド起源であり、中国人にとっては、外来思想でした。

しかし、仏教が中国に受け入れられた背景には、仏教と老荘思想の近似があるといわれます。いわば、老荘思想のメガネをとおして、仏教を学んでいった面があるということです。

安岡正篤先生は、大変、視野の広い思想家ですから、『禅と陽明学』の中で、儒教と老荘と禅との関係を考察されています。

大学の東洋思想研究者には、このような大きな視点での文章は、なかなか書けない面があります。

それは、知識の問題ではなく、学問の目的の違いからでしょう。

安岡先生の「学問」は、人としての生きる道を探求する「人間学」です。

それに対して、現在、日本の大学で研究されている東洋思想は、思想史という「歴史学」として研究されているので、厳密な文献学的研究が中心となって、人間学の観点が抜けていることが多いと思います。

現代社会に生きる私たちにとって、「儒教や老荘や禅の教えが、どのような意味を持つのか」言いかえれば、私たちがより良く生きるための知恵を教えてくださるのが、安岡教学の魅力なのだと思います。

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